「ペーパーレス化しないと…」と思いつつ、何から手をつければいいかわからない方は多いのではないでしょうか。2024年1月以降、電子取引で受け取った請求書や領収書などをデータのまま保存する対応が必要とされており、多くの企業で実務対応が求められています。この記事では、ペーパーレス化の第一歩として請求書・領収書の電子保存の始め方を解説します。
※本記事は情報提供を目的としており、税務判断そのものは行いません。個別の税務対応については、税理士など専門家にご相談ください。また、記載内容は2026年5月時点の情報をもとにしており、制度変更により内容が変わる場合があります。
電子帳簿保存法とは? 押さえておきたい基本
電子帳簿保存法(電帳法)は、国税関係の帳簿書類を電子データで保存することを認める法律です。大きく分けて3つの保存区分があります。それぞれの違いを下表で確認しましょう。
| 保存区分 | 対象となる書類・データ | 主な要件 | 義務・任意 |
|---|---|---|---|
| 電子帳簿等保存 | 会計ソフトで作成した帳簿・書類 | 真実性・可視性の確保(訂正削除履歴など) | 任意 |
| スキャナ保存 | 紙で受け取った請求書・領収書 | 200dpi以上・カラー・タイムスタンプ・検索機能 | 任意 |
| 電子取引データ保存 | メール・クラウドで受け取った電子データ | 改ざん防止措置・検索機能の確保 | 義務(2024年1月〜) |
まず対応すべきは「電子取引データ保存」
3つの区分のうち、義務とされている「電子取引データ保存」から優先して対応しましょう。これは、メールで受信した請求書PDFやクラウドサービスからダウンロードした領収書などを、紙に印刷して保存するのではなく、電子データのまま一定の要件を満たして保存することが求められるものです。
保存の要件として重要とされているのは以下の2点です。
検索機能の確保:取引年月日・取引金額・取引先で検索できるようにしておくことが要件とされています。ファイル名に「20260401_33000_株式会社○○」のように記録する方法でも対応可能とされています。
改ざん防止措置:タイムスタンプの付与、訂正削除の履歴が確認できるシステムの利用、事務処理規程の備付けのいずれかで対応することが要件とされています。
なお、電子帳簿保存法の要件はインボイス制度(適格請求書等保存方式)への対応状況とも関連する場合があります。自社の対応状況については、税理士や専門家にご確認いただくことをおすすめします。
自社でAIを活用した電帳法対応システムを構築してみた
「仕組みはわかったけど、実際の運用が大変そう」という声をよくいただきます。そこで弊社では、電帳法に対応したAIシステムを自社で構築・運用しています。
仕組みはシンプルで、PDFファイルを添付してチャットで送るだけ。あとはAIが自動で——
- 書類の種類を判別(請求書・領収書・注文書など)
- 取引先・金額・日付を読み取って仕分け
- 電帳法の要件を満たした形で保管
- データベースへ自動登録
登録後は、取引先名・日付・金額で即座に検索・集計できます。「あの請求書どこいった?」が起きない状態になりました。操作に必要なのは「PDFを送る」だけなので、経理担当者がITに詳しくなくても使える設計にしています。
この仕組みは弊社での実運用を経て、現在サービス化を検討中です。「うちでも使いたい」という方はお気軽にご相談ください。
紙の書類をスキャン保存する方法
電子取引データ保存の次に取り組みたいのが、紙で受け取った書類のスキャン保存です。こちらは任意の対応ですが、取り組むことで紙の保管スペースの削減や書類検索の効率化が期待できます。
スキャン保存の主な要件とされている内容は以下のとおりです。
- 解像度200dpi以上でスキャン
- カラー画像での保存(一部書類はグレースケール可)
- タイムスタンプの付与(入力期間内に処理)
- 検索機能の確保
スマートフォンのカメラで撮影したデータでも、要件を満たせば認められる場合があります。専用アプリを活用すると、より簡単に対応できます。
ペーパーレス化でよくある失敗
ペーパーレス化を進める際に、現場でよく起きる落とし穴をご紹介します。事前に知っておくことで、スムーズな導入につながります。
- 「とりあえずデータで保存」では要件を満たさない:電子取引データ保存には検索機能や改ざん防止措置が要件とされています。ファイルをただフォルダに保存するだけでは不十分なケースがあります。ファイル名のルールを決めるか、対応ツールを使いましょう。
- 一部の書類だけペーパーレスにして混乱する:紙とデータが混在した状態では、かえって管理の手間が増えることがあります。対象書類の範囲を明確にし、担当者全員に周知することが大切です。
- 担当者だけが使えるツールになってしまう:特定の担当者しか操作できないツールを導入すると、業務が属人化します。ITに詳しくないスタッフでも使えるシンプルな操作性を重視してツールを選びましょう。
- バックアップ体制を後回しにする:電子データは適切にバックアップしないと、システム障害やランサムウェア被害で一括消失するリスクがあります。クラウド保存と定期バックアップを最初から組み込みましょう。
- 会計ソフトとの連携を確認しないまま導入する:電帳法対応ツールを導入したものの、既存の会計ソフトとデータ連携できず手入力が増えるケースがあります。導入前にシステム間の連携可否を必ず確認してください。
ツール選びのポイント
ペーパーレス化を効率よく進めるためには、適切なツール選びが重要です。選定時のポイントをご紹介します。
電帳法対応を明示しているか:「JIIMA認証」を取得しているサービスであれば、保存要件への対応が確認されており安心です。
既存の業務フローに合うか:現在使っている会計ソフトや受発注システムと連携できるかどうかを確認しましょう。
操作が簡単か:ITに詳しくないスタッフも使えるシンプルな操作性は、定着の鍵になります。
コストは妥当か:従業員数や書類量に応じた適切な料金プランがあるかを比較しましょう。
よくある質問(FAQ)
Q. 電子取引データを紙に印刷して保存してはいけないのですか?
A. 2024年1月以降、電子取引で受け取った書類は原則として電子データのまま保存することが求められています。紙への印刷のみでの保存は認められなくなっているとされています。詳細は税理士または国税庁の公式情報でご確認ください。
Q. 小規模な事業者でも電子帳簿保存法への対応は必要ですか?
A. 電子取引データ保存の義務は、規模に関わらず電子取引を行っているすべての事業者に適用されるとされています。メールでPDFの請求書を受け取っているのであれば、個人事業主や小規模事業者も対応が必要です。
Q. ファイル名のルールを決めるだけで対応できますか?
A. 「日付_金額_取引先」のような形でファイル名を統一する方法は、検索要件への対応として認められるケースがあります。ただし、改ざん防止措置(事務処理規程の整備など)も別途必要とされています。具体的な対応方法は税理士にご確認ください。
Q. 専用ツールの導入は必須ですか?
A. 必須ではありません。ファイル名のルール化と事務処理規程の整備だけでも要件を満たせる場合があります。ただし、書類量が多い場合や経理業務の効率化を図りたい場合は、JIIMA認証取得のツールの導入がおすすめです。
Q. インボイス制度と電子帳簿保存法は別々に対応が必要ですか?
A. 2つは別の制度ですが、電子インボイス(電子データの適格請求書)を受け取る場合は電子帳簿保存法の電子取引データ保存の要件も同時に満たす必要があるとされています。自社の取引形態に合わせた確認を税理士にご相談ください。
Q. ペーパーレス化のコストはどのくらいかかりますか?
A. ファイル名のルール化と事務処理規程の整備であればツール費用はかかりません。専用ツールを使う場合は月額数千円〜数万円程度のサービスが多く、従業員規模や書類量によって異なります。なお、IT導入補助金などを活用してコストを抑えることができる場合もあります。
Q. アイ・エス・プライムにはどんなサポートを依頼できますか?
A. 電帳法対応に必要なシステムの構築・ツール選定のご相談から、AIを活用した電帳法対応システムの導入支援まで承っています。「何から始めればいいかわからない」という段階でも、実際の運用経験をもとに業務に合った進め方をご提案します。初回相談は無料です。
AIを活用するとさらに効率化できること
ペーパーレス化の次のステップとして、AI-OCR(AI光学文字認識)の活用が注目されています。従来のOCRは手書き文字の認識精度が低く実用性に難がありましたが、AI-OCRは手書きの請求書や納品書も高精度で読み取り、データとして自動入力することができます。スキャンするだけで帳票データが会計ソフトに連携される仕組みを作れば、入力作業はほぼゼロになります。「スキャンして終わり」ではなく「スキャンしたら自動で処理される」状態を目指すと、ペーパーレス化の効果が格段に高まります。電子帳簿保存法への対応と同時にAI-OCRを導入することで、法対応とコスト削減を一石二鳥で実現できます。
まとめ
ペーパーレス化は、一度に完璧を目指す必要はありません。まずは義務とされている電子取引データ保存から対応し、余裕ができたらスキャン保存にも取り組むという段階的なアプローチがおすすめです。ファイル名のルールを決めるだけでも、立派な第一歩になります。なお、税務上の判断については必ず税理士等の専門家にご確認ください。
株式会社アイ・エス・プライムでは、電子帳簿保存法への対応を含むDX支援を行っています。また、弊社が自社業務で実際に構築・運用しているAIを活用した電帳法対応システムのサービス化も進めています。「何から始めればいいかわからない」という段階でも、実体験をもとに業務に合わせた進め方をご提案します。初回相談は無料です。

