インボイス制度、2026年10月の大変更に備える──中小企業が今から準備すべきポイント

インボイス制度、2026年10月の大変更に備える──中小企業が今から準備すべきポイント | 株式会社アイ・エス・プライム

2023年10月にスタートしたインボイス制度(適格請求書等保存方式)は、導入から3年が経とうとしています。「なんとか対応してきた」という中小企業の方も多いかもしれませんが、2026年10月には制度上の大きな変化が訪れます。特に免税事業者や小規模事業者にとって影響が大きいとみられる「2割特例の終了」と「経過措置の縮小」について、今から準備しておくことが重要です。本記事では2026年5月時点の情報をもとに、変更点と実務上の対応ポイントを整理します。

目次

おさらい──インボイス制度の基本と現在の経過措置の状況(2026年5月時点)

インボイス制度とは、消費税の仕入税額控除を受けるために「適格請求書(インボイス)」の保存が必要となる制度です。仕入税額控除とは、売上に含まれる消費税から仕入れ・経費に含まれる消費税を差し引ける仕組みで、企業が二重課税を避けるための重要な制度です。

インボイスを発行できるのは「適格請求書発行事業者」として税務署に登録した事業者のみです。登録を受けていない免税事業者(年間売上1,000万円以下が目安)からの仕入れは、原則として仕入税額控除の対象外となります。ただし、制度開始直後の混乱を緩和するために、複数の経過措置が設けられました。

現行(2026年5月時点)の主な経過措置は以下のとおりです。

  • 2割特例:インボイス登録を機に課税事業者となった方が、納付する消費税を売上税額の2割に抑えられる特例。2023年10月〜2026年9月申告分まで適用される見込みです。
  • 免税事業者からの仕入れに係る経過措置:インボイス未登録の取引先からの仕入れについて、一定割合を仕入税額控除できる措置。2023〜2026年9月は80%控除、2026年10月〜2029年9月は50%控除に縮小される予定です。

※ 制度の詳細・最新情報は必ず国税庁公式サイト(https://www.nta.go.jp)でご確認ください。

2026年10月に何が変わるか

2026年10月以降、主に2つの変化が生じると考えられます。

①「2割特例」の終了

2割特例は2026年9月末の申告分をもって終了する見込みです。これにより、特例を活用していた事業者の納税額は増加する可能性があります。たとえば、これまで売上税額の20%だった納税額が、本則課税・簡易課税の計算方式に切り替わることで、業種・経費構造によっては30〜40%以上になるケースも考えられます。

簡易課税制度(売上5,000万円以下の事業者が選択可能)を利用する場合は、事前に届出が必要です。適用を希望する課税期間の前日(2期前)までに届出書を提出しなければならないため、早めに税理士などに相談することをおすすめします。

②免税事業者からの仕入れに係る経過措置の縮小

現在(2023年10月〜2026年9月)は、インボイス未登録の取引先からの仕入れについて80%分を仕入税額控除できる措置が続いています。2026年10月以降はこれが50%に縮小される予定です。免税事業者との取引が多い業種(建設業の一人親方との取引、フリーランスへの外注など)では、負担増が見込まれます。

準備①「自社の仕入れ先のインボイス登録状況を確認する」

まず取り組みたいのが、現在取引している仕入れ先・外注先のインボイス登録状況の把握です。国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」では、登録番号や事業者名で検索して登録状況を確認できます。

確認すべき主なポイントは次のとおりです。

  • 取引先が適格請求書発行事業者として登録されているか
  • 受領している請求書にインボイス登録番号が記載されているか
  • 登録番号が実際に公表サイトと一致しているか

未登録の取引先がいる場合、①登録を促す、②取引価格を見直す、③取引継続のまま税負担増を受け入れる、といった選択肢を検討することになります。いずれも取引先との関係性に関わるため、早めに状況を把握しておくことが大切です。

準備②「会計・請求ソフトのアップデート対応を確認する」

インボイス対応に欠かせないのが、会計ソフト・請求書ソフトのアップデートへの対応です。主要なクラウド会計ツール(freee、マネーフォワード クラウド、弥生クラウドなど)は随時インボイス対応の機能追加をおこなっていますが、設定変更が必要な場合もあります。

確認しておきたい項目を挙げます。

  • 請求書テンプレートにインボイス登録番号が自動印字されているか
  • 仕入れ先ごとにインボイス登録状況を紐付けて管理できているか
  • 経過措置の控除割合(80% / 50%)が自動で切り替わる設定になっているか
  • 電子帳簿保存法の要件(タイムスタンプ、検索機能など)も同時に満たしているか

ソフトウェアの機能だけでは対応が難しい場合は、システムのカスタマイズや運用フローの見直しが必要になることもあります。現在の業務フローを棚卸しして、どこに手動の手間が残っているかを確認してみてください。

準備③「取引先への事前連絡と確認」

特に影響が大きいのが、免税事業者との継続取引をどうするかという判断です。一方的に取引条件の変更を求めることは独占禁止法上問題になり得るとされているため、丁寧なコミュニケーションが求められます。

公正取引委員会のガイドラインでは、免税事業者との取引において一方的に価格を引き下げることや取引を打ち切ることは、優越的地位の濫用に該当する可能性があると示されています。あくまで取引先と話し合いのうえで対応を検討することが重要です。

実務上の対応として考えられる流れは以下のとおりです。

  • 免税事業者のリストを作成し、取引金額・頻度を整理する
  • インボイス登録の意向があるかどうかを丁寧に確認する
  • 登録予定がない場合、双方にとって納得できる条件を話し合う
  • 2026年9月末までに方針を決定し、会計処理に反映する

よくある疑問に答えるQ&A

Q1. 2割特例は自動的に終了するのですか?

A. 現行の税法では2026年9月末の申告分をもって終了する予定です。自動的に終了しますので、10月以降は本則課税または簡易課税の計算方式が適用されます。ただし、税制改正によって変更される可能性もありますので、最新情報を国税庁サイトでご確認ください。

Q2. 簡易課税制度に切り替えるには何が必要ですか?

A. 適用を希望する課税期間の前日(原則として前課税期間の末日)までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を税務署に提出する必要があります。事業区分(第一種〜第六種)によってみなし仕入率が異なりますので、自社の業種に合った区分を確認してください。

Q3. 免税事業者の取引先が多い場合、どれくらい税負担が増えますか?

A. 具体的な影響額は取引金額・業種・現行の課税方式によって大きく異なります。目安として、年間100万円の免税事業者からの仕入れがある場合、経過措置縮小(80%→50%)で追加負担が生じる税額は概算で数万円規模になるケースが考えられます。正確な試算は税理士にご相談ください。

Q4. 登録番号の確認は毎回必要ですか?

A. 取引の都度確認する義務はありませんが、登録の取り消しや失効が起きる場合もあります。定期的(半年に1度程度)に国税庁の公表サイトで確認する運用がおすすめです。クラウド会計ソフトによっては自動連携機能を持つものもあります。

Q5. 会計ソフトを変えなくても対応できますか?

A. 既存のソフトでも、設定変更やアップデートで対応できる場合があります。ただし、古いバージョンのソフトやインボイス対応が限定的なシステムは、手動での対応が増えコストがかかる可能性があります。費用対効果を比較してみることをおすすめします。

AIを活用するとさらに効率化できること

インボイス対応の実務には、相当な事務工数がかかります。特に仕入れ先の登録状況確認や請求書の内容チェックは手間のかかる作業です。ここにAIを活用することで、大幅な効率化が期待できます。

  • AI-OCR・自動請求書読み取り:紙の請求書やPDFをOCRで自動読み取りし、インボイス登録番号・税率・税額などの項目を自動抽出。転記ミスを減らしながら処理速度を高められます。
  • AI仕訳支援:クラウド会計ソフトに搭載されたAI仕訳機能は、過去の仕訳パターンを学習して自動提案します。経過措置の割合変更にも設定を調整するだけで対応できます。
  • 自動チェック・アラート:登録番号の有効性確認や、インボイスの記載要件(登録番号・税率・税額の明記など)をAIが自動チェックする仕組みを導入することで、担当者の確認作業を最小限にできます。

こうしたツールを組み合わせることで、経理担当者が本来の業務分析・判断に集中できる環境を整えることが可能です。

まとめ──2026年9月末までに対応を完了させるロードマップ

インボイス制度の2026年10月変更に向けて、今からおこなうべき対応をまとめます。

  • 2026年5〜6月:仕入れ先・外注先のインボイス登録状況の全件確認
  • 2026年6〜7月:会計・請求ソフトの設定確認・アップデート対応
  • 2026年7〜8月:免税事業者の取引先へ連絡・方針の協議
  • 2026年8〜9月:簡易課税制度の選択届出(必要な場合)・経理フロー修正
  • 2026年9月末:全対応の完了・10月以降の新フロー確認

変更内容は法令・告示の改正によって変わる可能性があります。本記事は2026年5月時点の情報をもとに作成していますが、最終的には国税庁の公式サイトや税理士・専門家への確認を必ずおこなってください。

株式会社アイ・エス・プライムでは、インボイス対応に関連する業務システムの改善やクラウド会計・請求ツールの導入支援をおこなっています。「どこから手をつければよいかわからない」という段階からお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

石原 則和のアバター 石原 則和 代表取締役

株式会社アイ・エス・プライム 代表取締役。群馬県桐生市を拠点に、中小企業の業務改善・システム開発・Web制作・ウェブ解析・IoT・DX支援を手がける。コンサルティングを軸に、お客様の業務を深く理解したうえで最適なソリューションを提案するスタイルで、製造業・小売業・サービス業など多様な業種の課題解決に携わる。ウェブ解析士マスター・提案型ウェブアナリスト・デジタル庁 デジタル推進委員。

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