「ホームページは持っているのに、なかなか問い合わせが来ない」——中小製造業の経営者から、こうしたお悩みをよくお聞きします。自社の技術や製品に自信があるにもかかわらず、Webからの新規獲得がうまくいかないのはなぜでしょうか。今回は、弊社がご支援した群馬県内の金属加工業者様のWebサイトリニューアル事例をご紹介します。リニューアルから6か月で月間問い合わせ数がほぼ2倍になった取り組みの中身を具体的に解説します。
事例概要:リニューアル前の状況
ご支援したのは、群馬県内で精密板金加工を手がける従業員20名ほどの製造業者様です。創業30年以上のノウハウと高い技術力をお持ちですが、Webサイトは10年以上前に制作したまま更新が止まっていました。月間のサイト訪問者数は約300セッション、問い合わせは月に2〜3件という状況で、新規受注のほとんどは既存顧客からの紹介に頼っていました。「もっと広く認知されたいが、何から手をつければよいかわからない」というご相談をいただいたのが支援のきっかけです。
問い合わせが来なかった3つの原因
現状のサイトを詳しく分析したところ、大きく3つの問題が見つかりました。
① 古いデザイン・スマホ未対応
当時のサイトはPC表示を前提に作られており、スマートフォンで閲覧すると文字が小さく、横スクロールが必要な状態でした。Googleアナリティクスのデータを確認すると、スマホからのアクセスが全体の約55%を占めていたにもかかわらず、スマホ経由の直帰率は85%超。訪問者の大半がすぐに離脱していたのです。
② サービス内容が分かりにくい
「精密板金加工」という言葉だけが前面に出ており、具体的にどのような素材・板厚・加工精度に対応しているのか、どのような業種・用途に強いのかが伝わっていませんでした。初めて訪問した担当者が「自社の発注に対応できるか」を判断するための情報が不足していたのです。
③ CTAが弱い
問い合わせフォームはあったものの、サイトの最下部にテキストリンクが1箇所あるだけでした。サービスページを読み終えても「次にどうすればいいか」が分からず、訪問者は行動を起こさないまま離脱していました。
リニューアルで実施した施策①「コンテンツの見直し」
最初に取り組んだのは、自社の強みを整理して言語化することでした。担当者へのインタビューを通じて「t0.5mmの薄板から30mmの厚板まで対応可能」「試作から量産まで一貫対応」「納期短縮のため社内に金型製作設備を保有」といった具体的な強みを洗い出し、顧客が比較検討するうえで重要な情報をトップページとサービスページに明確に記載しました。
また、過去の製作実績を写真付きで掲載する「実績紹介」ページを新設しました。医療機器部品・産業機器筐体・自動車関連部品など多様な分野への対応実績を示すことで、訪問者が「自分たちの業界にも対応してもらえる」と感じられる構成にしました。守秘義務がある案件については「精密機器メーカー向け○○部品」のように業種と部品名だけを記載し、写真は差し支えのない範囲で掲載しています。
リニューアルで実施した施策②「SEO対策」
SEO面では、まずターゲットキーワードの選定から着手しました。「精密板金加工」「板金加工 群馬」「薄板加工 試作」など、受注につながりやすい検索語句を選び、各ページに適切に配置しました。合わせて、タイトルタグとmeta descriptionを全ページで見直し、検索結果での目立ち方を改善しています。
さらに、LocalビジネスとManufacturerの構造化データ(JSON-LD)を実装しました。これにより、Googleが「群馬県内の製造業者」として自社サイトを正しく認識しやすくなり、地域検索での表示機会が増加しました。ブログでも「板金加工の基礎知識」「素材別加工の特徴」といったコンテンツを定期配信し、専門性のアピールとロングテールキーワード獲得を図っています。
リニューアルで実施した施策③「UX改善」
スマートフォンに完全対応したレスポンシブデザインに刷新し、どの端末からでも快適に閲覧できるようにしました。ファーストビュー(画面を開いた際に最初に見える領域)には「対応素材・板厚・製品サイズ一覧」と「無料見積もり依頼」ボタンを配置し、訪問者が5秒以内に「ここで発注できそうだ」と判断できる構成にしています。
問い合わせフォームも大幅に改善しました。以前は入力項目が20項目以上あり、見積もり依頼のハードルが高い状態でした。リニューアル後は必須項目を「品名・素材・数量・希望納期・連絡先」の5項目に絞り、残りを任意項目にしました。また、各サービスページの中段と末尾にCTAボタンを設置し、「もっと詳しく知りたい」と思ったタイミングで即座にアクションできる動線を用意しています。
結果:Before/After比較
リニューアルから6か月後の主要指標を比較した結果は以下のとおりです。
| 指標 | リニューアル前(月平均) | 6か月後(月平均) | 変化 |
|---|---|---|---|
| 問い合わせ数 | 2.5件 | 5.2件 | +108% |
| 月間PV | 約800PV | 約1,900PV | +138% |
| 直帰率 | 78% | 52% | −26pt |
| モバイルアクセス比率 | 55% | 61% | +6pt |
| モバイル直帰率 | 85% | 48% | −37pt |
出典:本文記載のリニューアル前後6か月の月平均比較(群馬県内・精密板金加工業者の事例)
特筆すべきはモバイル直帰率の改善です。スマホ対応と表示速度の向上により、スマートフォンからの訪問者が長くサイトに滞在するようになりました。問い合わせのうち3件はリニューアル前には接点がなかった新規企業からであり、Webが新たな受注チャネルとして機能し始めています。
費用感とROI
今回のリニューアルにかかった費用は、制作費・SEO設定・コンテンツ制作を合わせて約80万円(税別)でした。リニューアル後6か月間で獲得した新規案件は4件、うち2件は受注に至り、合計受注額は約350万円でした。単純計算でROIは約337%となります。
もちろん、リニューアルの効果がすぐに出るとは限りません。SEOの効果が安定するまでには一般的に3〜6か月かかります。この事例では、コンテンツ施策とSEO対策を組み合わせたことで比較的早く成果が出ましたが、業種や競合状況によって異なります。継続的なコンテンツ更新やアクセス解析に基づく改善を行うことで、さらなる効果の向上が期待できます。
AIを活用するとさらに効率化できること
今回ご紹介した施策は人的工数で対応しましたが、AIツールを活用することで同様の改善をより効率的に進めることが可能です。
- AIヒートマップ・行動分析: Microsoftが提供するClarity(無料)などのAIヒートマップツールを使うと、訪問者がどこをクリックしているか、どこで離脱しているかを自動集計・可視化してくれます。人手でセッション録画を確認する必要がなく、改善箇所の特定にかかる時間を大幅に短縮できます。
- AIによるコンテンツ改善提案: ChatGPTやClaudeを活用すると、既存のサービスページの文章を読み込ませて「検索意図に合ったリライト案」や「よく聞かれる質問のFAQ案」を短時間で生成できます。専任のライターを雇わなくても、一定品質のコンテンツを継続的に更新することが現実的になります。
- チャットボットの追加: サイトにAIチャットボットを設置することで、営業時間外でも見積もり相談への対応が可能になります。「対応素材は?」「最小ロットは?」といったよくある質問に自動で答えることで、問い合わせの前段階での離脱を防ぎ、フォーム送信率をさらに高める効果が期待できます。
まとめ
今回の事例から見えてくるのは、「技術力があるのにWebから問い合わせが来ない」という問題は、多くの場合、情報設計・SEO・UXの3点を改善することで解消できるという点です。特にスマートフォン対応と問い合わせ動線の整備は、費用対効果が高い施策です。
株式会社アイ・エス・プライムでは、製造業・BtoB事業者向けのWebサイトリニューアルやウェブ解析支援を承っています。「まず現状を診断してほしい」という段階からご相談いただけます。





